日常の臨床において,エアータービン歯科による交差感染を回避するため滅菌の次善策として使用後の空まわしが推奨されている。前述の空まわし実験の結果でも,侵入した菌の大部分は最初の30秒間で排出されており,病原性因子を希釈減少させるという点で,本操作が有効であることが確認された。

空まわし後に,外表面の清拭,消毒を行えば交差感染の原因となる危険性は非常に低いと想像される。しかし,空まわしでは内部汚染は完全には除去できないことも事実であり,高齢者や有病者といった,いわゆる易感染性患者の処置機会が今後も増加していくと予想されることや,歯科医療に対する要求が全般的に高度化していることなどを配慮すると,内部汚染防止機構を備えたシステムの導入と,ハンドピースの使用毎の滅菌は推奨されるべきであろう。
滅菌方法と問題点
ハンドピースの滅菌方法としてオートクレーブ滅菌が最も適している。現在市販されているハンドピースはほとんどがオートクレーブ滅菌が可能だが,古いものでは適さないものもあり注意を要する。オートクレーブ滅菌が可能とされているものでも,繰り返し行うことにより,ベアリングや Oリング等の劣化,切削屑の焼き付き等がおきる。この程度は器材により異なるため製品の選択に注意を要する。一般にいずれのメーカーの製品でも注意深く行えば1000回程度のオートクレーブ滅菌は問題ないようである。