智歯抜歯時の薄い骨壁への対応

智歯を抜歯して時間が経ってから、その際に折れたと思われる薄い骨壁が出てくることがあります。この場合、患者に痛いと言われなければ取らなくてもよいのか、もしくは絶対に取るべきなのか、抜歯時に偶発する事象なのかも含めてお教えください。

A抜歯後に認める薄い骨壁は、抜歯時の歯槽骨骨折の骨片と思われます。
抜歯に伴う偶発症として、歯槽骨骨折、ドライソケット、異常出血、神経損傷、歯根の迷入などが挙げられます。抜歯に伴う歯槽骨骨折は、骨の比較的薄い上下顎前歯部や下顎智歯舌側部に好発すると報告されています1)。

智歯抜歯時の薄い骨壁への対応

無理な力を加えて乱暴に抜歯したり、挺子の挿入部位を舌側にするなどの行為によって起こります。歯槽骨骨折は術後疼痛の原因となり、小骨片が腐骨化し疼痛が持続することが多いため、遊離した骨片は原則的に除去する必要があります。

骨片が極めて小さく炎症を伴わない場合に限り、麻酔をせずに除去することは可能ですが、一般的には局所麻酔下での除去がよいでしょう。骨片が比較的大きく、骨膜が付着している場合には、骨片の除去に際し骨膜を丁寧に剥離する必要があります。骨片除去後には創部を縫合し、安静にします。とくに下顎智歯部舌側の骨片の場合、骨片舌側には舌神経が走行しているため、神経を損傷してしまう危険性があります。そのため、術後のダメージを考慮し、口腔外科への紹介も必要です。

時の歯槽骨骨折を含め、偶発症を起こさないためには術前評価が重要です。抜歯を行う歯の位置、方向、埋伏の状態、動揺や歯冠崩壊の程度を評価します。また、X線写真で、歯根の数、長さ、肥大、離開や彎曲の程度や歯根周囲の骨硬化の状態も評価します。埋伏歯の場合、深度や角度の評価も行います。また、CT画像では、頬舌側歯槽骨の厚さや下歯槽管との位置関係を確認できます。

抜歯の際、適切な器具の選択や丁寧な手術手技がとくに重要です。抜歯鉗子による抜歯は、歯周組織の損傷が少なく抜歯力が調節しやすい利点があります。挺子による抜歯では、楔作用、回転作用、てこ作用を利用しますが、挺子先端が歯根と歯槽骨の間に挿入されないと、過度な力により歯槽骨骨折を起こす原因となってしまいます。抜歯後に残存する鋭利な骨縁などは、血行障害を引き起こし、腐骨片の原因となるため、破骨鉗子や骨ヤスリで歯槽骨の形態を整形する必要があります。以上のように、綿密な術前計画と丁寧な術中操作を心がけることにより、抜歯時の偶発症を、可能な限り避けることができます。(リムービング プライヤー